大雪山という名前は北海道の山の話で頻繁に出てきますが、地図でその名前の頂上を探しても見つかりません。旭岳、黒岳、十勝岳といった山の名前と並んで使われるため、位置関係が分かりにくくなっています。
答えを先に書くと、大雪山は単独の峰ではなく山域全体の呼び名です。この記事では環境省の大雪山国立公園の概要が公表している数値を並べて、その中身を整理します。
この記事でわかること
- 大雪山が単独の山ではなく山域の呼び名であること
- 公園面積226,764haが日本最大であること
- 旭岳と黒岳で山頂までの所要時間が2.5倍違うこと
- 高山植物約250種が日本全体の4割にあたること
- 標高2,000mの高所に永久凍土があること
226,764haという広さ
環境省によれば、大雪山国立公園の指定年月日は昭和9年12月4日、公園面積は陸域で226,764haです。関係都道府県は北海道のみで、関係市町村は1市9町にわたります。
環境省は同公園を「北海道の中央部に広がる日本最大の山岳公園」と説明しています。1つの道の中に、これだけの面積の山域がまとまって存在していることになります。
市町村の内訳は、富良野市、上川町、東川町、美瑛町、上富良野町、南富良野町、士幌町、上士幌町、鹿追町、新得町です。10の自治体にまたがるひとつの公園だと考えると、規模の感覚がつかみやすくなります。
この広さこそが、大雪山という名前が単独の峰を指さない理由です。旭岳も十勝岳も、この226,764haの中にある個々の山という位置づけになります。
226,764haは2,267.64平方キロメートルにあたります。仮に正方形だとすれば1辺が約47.6kmです。端から端まで歩けば丸1日以上かかる距離が、公園の一辺の目安になります。
この数字を頭に入れておくと、旭岳と十勝岳を1日で回ろうとする計画が現実的でないことがすぐ分かります。宿を取る場所を決める時点で、公園のどのあたりに滞在するかを選んでいることになります。
旭岳と十勝岳の標高
環境省が挙げている主な山の標高を並べます。
| 山 | 標高 | 備考 |
|---|---|---|
| 旭岳 | 2,291m | 北海道最高峰 |
| 十勝岳 | 2,077m | 活火山 |
| 東大雪丸山 | 1,692m | 東大雪エリア |
| 沼ノ原 | 1,420〜1,460m | 湿原 |
| 然別湖 | 810m | 最深部 約100m |
旭岳の2,291mと十勝岳の2,077mで214mの差があります。どちらも2,000mを超えており、この2つが公園の高さを代表する山です。
一方で沼ノ原は1,420mから1,460m、然別湖は810mです。同じ公園の中に、2,291mの頂上と810mの湖が含まれています。標高で1,500m近い幅があるということです。
黒岳と旭岳で所要時間が2.5倍違う
どこへ行くかを決めるうえで、実用的なのは山頂までの時間です。環境省の見どころのページには次のように書かれています。
- 黒岳|歩いて約1時間で黒岳山頂に到着
- 旭岳|姿見の池を経由して、北海道最高峰の旭岳山頂まで約2.5時間
約1時間と約2.5時間ですので、2.5倍の差があります。同じ大雪山という言葉でくくられていても、必要な時間はまったく違います。
この差は日程の組み方に直結します。黒岳なら午前中に山頂を往復して午後に別の場所へ移動できますが、旭岳の往復は5時間前後を見ておく必要があります。
往復で考えると差はさらに開きます。黒岳が片道1時間で往復2時間、旭岳が片道2.5時間で往復5時間ですから、その差は3時間です。乗り物の待ち時間と休憩を足せば、旭岳は一日仕事になります。
どちらも乗り物で標高を稼いだ先からの時間である点は共通しています。つまりこの1時間と2.5時間は、乗り物を降りてから歩く時間の比較です。麓から歩き通す時間ではありません。
私が調べていて感じたのは、「大雪山に登る」という言い方が実際にはほとんど意味を持たない、ということです。黒岳へ行くのか旭岳へ行くのかで、必要な体力も時間も別物になります。
旭岳側の乗り物と料金は、旭岳ロープウェーの料金は?大人だけ季節で変わるに整理しました。季節で運賃が2段階に分かれる仕組みを扱っています。
高山植物250種は日本の4割
環境省は、この公園で確認されている高山植物を約250種としています。そしてこれが日本の高山植物の4割に相当すると説明しています。
日本全体の4割が1つの国立公園の中にあるという数字は、面積の226,764haと合わせて読むと意味がつかみやすくなります。広さがそのまま種類の多さにつながっている形です。
環境省は標高2,000mの高所に永久凍土が存在することも挙げています。本州であれば3,000m級に現れるような環境が、北海道では2,000mで成立していることになります。
高山植物の見頃と登山道の開設期間は連動します。大雪高原温泉の沼めぐりは6月中旬から10月上旬が期間とされており、この4か月弱がこの山域の歩ける季節です。
約250種が4割にあたるということは、日本全体の高山植物はおよそ600種台という計算になります。残り6割が本州以南の山々に分かれて分布していると考えると、この公園1つの密度の高さが際立ちます。
永久凍土の話も、単なる寒さの指標ではありません。標高2,000mで凍土が残るということは、夏でも地中の温度が上がりきらないということです。同じ標高の本州の山とは、足元の環境そのものが違うことになります。
火口の直径で桁が変わる
地形の数値も並べておきます。お鉢平は直径約2kmの窪地で、形成は約3万年前です。一方、十勝三股の樹海は直径10km以上のカルデラ盆地で、形成は約100万年前とされています。
直径で5倍、時間では約33倍の開きがあります。同じ公園の中に、3万年前の地形と100万年前の地形が並んでいることになります。
滝もあります。天人峡の羽衣ノ滝は落差270mで、日本の滝百選に選ばれています。落差270mという数字は、旭岳の標高2,291mのおよそ8分の1にあたる高さです。
お鉢平の直径約2kmは、歩いて回れば数時間かかる規模です。火口を「窪地」と表現している時点で、想像するスケールを一段上げておく必要があります。
紅葉は9月中旬から始まる
環境省は銀泉台の紅葉時期を9月中旬としています。本州の山より1か月ほど早い時期にあたります。
沼めぐりの期間が10月上旬までであることと合わせると、この山域の紅葉は9月中旬から10月上旬という短い窓に集中します。日程の自由度が小さいのが特徴です。
およそ3週間しかない窓に、遠方からの移動を合わせる必要があります。本州の紅葉のように「10月と11月のどちらでも」という選び方はできません。9月の予定を早めに空けておくかどうかが、実際には最大の判断になります。
同じ道東の活火山で9月に色づく山として、雌阿寒岳の3コースはどれが楽?距離と勾配の差も合わせて検討できます。大雪山とは別の国立公園ですが、季節の窓は近い時期に重なります。
旭岳側の紅葉と歩き方は旭岳の紅葉は9月が見頃?姿見の池の一周コースにまとめています。
十勝岳側は活火山ですので、噴火警戒レベルの確認が前提になります。十勝岳は今登れる?噴火警戒レベルと望岳台で判断の手順を整理しました。
よくある質問|大雪山
大雪山という山はどこにありますか?
大雪山という名前の単独の頂上はありません。北海道中央部に広がる226,764haの山域全体を指す呼び名です。
大雪山の最高峰はどこですか?
旭岳の2,291mです。環境省は北海道最高峰と説明しています。
大雪山国立公園はいつ指定されましたか?
昭和9年12月4日です。関係都道府県は北海道のみで、10の市町にまたがっています。
黒岳と旭岳はどちらが登りやすいですか?
時間だけで比べれば黒岳です。環境省の案内では黒岳が山頂まで約1時間、旭岳は姿見の池を経由して約2.5時間とされています。
大雪山の高山植物は何種類ありますか?
約250種が確認されており、日本の高山植物の4割に相当すると環境省は説明しています。
紅葉はいつ見られますか?
環境省は銀泉台の紅葉時期を9月中旬としています。沼めぐりの期間が10月上旬までですので、実質的な窓はこの3週間ほどです。
まとめ
- 大雪山を1つの山として計画しないことから始めます。226,764haの山域の呼び名ですので、行き先は旭岳か黒岳かというレベルで決めます。
- 所要時間で行き先を選びます。黒岳は山頂まで約1時間、旭岳は約2.5時間で、往復にすると差はさらに開きます。
- 9月中旬から10月上旬という短い窓を押さえます。銀泉台の紅葉が9月中旬、沼めぐりの期間が10月上旬までです。
大雪山は、名前の指す範囲を先に理解しておくだけで計画が立てやすくなる山域です。面積と標高と所要時間の3つを並べてから、どの山へ行くかを決めてください。


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