蛭ヶ岳(ひるがたけ)の登山記録を検索すると、コースタイム7時間台という数字と13時間という数字が同時に出てきます。同じ山とは思えない開きですが、どちらも間違いではありません。差を生んでいるのは、どこを出発点として数えているかです。
▶ 丹沢の全体像は「丹沢の山はどこを選ぶ?6座の標高差と所要時間」にまとめています。
この記事では標高1,673mの蛭ヶ岳について、登山口ごとの距離と時間を並べたうえで、電車で向かった場合に数字がどう変わるかを整理します。
この記事でわかること
- 蛭ヶ岳が標高1,673mの丹沢山地最高峰であり、神奈川県の最高峰でもあること
- 最短ルートが15.6km・7時間39分、大倉からの往復が25.2km・13時間であること
- 最短の数字が林道ゲートを起点にしていて、バス停からだと往復で約5kmと1時間半が加わること
- 東野バス停から釜立林道の地点まで、徒歩2,472m・44分・標高差192mという実測値
- 山頂の蛭ヶ岳山荘に泊まれば、日帰りの時間制約から外れること

蛭ヶ岳の最短ルートはどこですか?
蛭ヶ岳の最短ルートは、北側の青根から釜立林道を詰め、姫次を経由して山頂へ向かう道です。距離15.6km、コースタイム7時間39分、累積標高差は登り1,558m・下り1,553mという数字が公開されています。
丹沢の主要ルートを並べると、この短さが際立ちます。
| ルート | 起点 | 距離 | コースタイム | 累積標高差(登り) |
|---|---|---|---|---|
| 姫次経由の周回 | 釜立林道ゲート付近 | 15.6km | 7時間39分 | 1,558m |
| 檜洞丸経由の往復 | 西丹沢ビジターセンター | 19km | 12時間46分 | 2,537m |
| 丹沢主脈の縦走 | 焼山登山口 | 24.6km | 12時間3分 | 2,207m |
| 大倉からの往復 | 大倉登山口 | 25.2km | 13時間 | 2,350m |
最短ルートと大倉からの往復では、距離で約10km、時間で5時間以上の開きがあります。蛭ヶ岳を日帰りで狙う記録の多くが北側から入っているのは、この差が理由です。
大倉から蛭ヶ岳まではどれくらいですか?
大倉から入る場合、大倉尾根で塔ノ岳へ上がり、丹沢山を越えてさらに西へ進みます。往復25.2km、コースタイム13時間、累積標高差は登り2,350mです。
この行程は途中に主峰が3つ並びます。塔ノ岳までの登りが最初の関門で、そこから丹沢山、さらに蛭ヶ岳と続く構成です。塔ノ岳までの区間は塔ノ岳の大倉尾根の歩き方、丹沢山から先の様子は丹沢山は日帰りできる?塔ノ岳から先の90分にまとめています。
コースタイム13時間は、休憩を含まない標準的な歩行時間です。実際には食事と休憩で1〜2時間が加わるため、日の出前に歩き始めても日没に間に合わない可能性があります。大倉から入る場合は山中泊を前提に組むほうが現実的です。
電車で行くと最短ルートは何が変わりますか?
最短ルートの15.6kmという数字には、注意すべき前提があります。起点が釜立林道のゲート付近、つまり車で林道を詰めた地点だという点です。
公共交通機関で向かう場合、JR橋本駅または相模湖駅からバスで三ケ木へ出て、乗り換えて東野で降ります。ここから林道の起点までは歩くしかありません。
編集部でルート検索と標高データを確認したところ、東野のバス停から釜立林道の地点まで徒歩2,472m・所要44分・標高差192mでした。往復では約5km、1時間半が単純に加わります。

この差が、記録によって蛭ヶ岳の登山ルートの数字がばらつく理由です。バス停を起点に数えた資料では、同じ北側からの道が20.91km・9時間45分と示されています。15.6kmと20.91km、どちらも青根側の道を指していますが、前者は車、後者はバスを前提にしています。
| 前提 | 起点 | 距離 | コースタイム |
|---|---|---|---|
| 車で林道を詰める | 釜立林道ゲート付近 | 15.6km | 7時間39分 |
| バスで東野まで | 東野バス停 | 20.91km | 9時間45分 |
私が計画を立てるときに最初に見るのは、帰りのバスの最終時刻です。往路の林道歩きは体力の問題で済みますが、復路で乗り遅れると移動手段そのものがなくなります。
コースタイムを自分の歩行速度に置き換える方法は登山のコースタイムの読み方で解説しています。
蛭ヶ岳が日帰りで難しいのはなぜですか?
蛭ヶ岳は丹沢山地の中央、最も奥まった位置にあります。標高1,673mという数字だけを見ると、日本アルプスの山々より低く感じられます。難しさは高さではなく、どの登山口からも遠いという配置から来ています。
- どの登山口からも片道7km以上ある
- 最短ルートでも累積標高差が登り1,558mある
- 主脈の縦走路は登り返しが連続し、標高差の数字以上に脚を使う
- 途中でエスケープできる道が限られる
- 山頂周辺に一般的な交通手段がない
丹沢は都心から近く、日帰りの山という印象があります。同じ山域でも大山や鍋割山は半日で歩ける一方、蛭ヶ岳は同じ感覚で計画すると破綻します。
日照時間の影響も大きく受けます。コースタイム10時間前後の行程は、日の短い時期には明るいうちに終わりません。日帰りを狙うなら日照時間の長い時期を選び、それ以外は山中泊を検討してください。
蛭ヶ岳山荘に泊まる選択肢は?
蛭ヶ岳の山頂には蛭ヶ岳山荘があり、通年営業で宿泊と休憩ができます。丹沢の主脈上で山頂に小屋があるのはここだけです。
泊まりを選ぶと、行程の組み方が根本から変わります。日帰りでは往復を1日に収める必要がありますが、1泊すれば大倉から入って北側へ抜ける、あるいは逆方向へ通り抜けるといった縦走が成り立ちます。

山頂は展望が開けており、条件が合えば富士山が見えます。日帰りで山頂に立てる時間帯は限られますが、泊まれば朝夕の時間帯をそのまま使えます。
日帰りにこだわらないほうが、結果として蛭ヶ岳の登山を無理なく組めます。時間に追われて下山を急ぐより、行程を2日に分けるほうが安全です。
蛭ヶ岳にはどんな装備が必要ですか?
行動時間8〜13時間という前提で装備を考えてください。同じ丹沢の日帰りの山とは、必要な量が変わります。
- ヘッドライト|日没にかかる可能性がある行程です。予備電池も持ってください
- 水|主脈上に水場は多くありません。行動時間に見合う量を担ぐ判断が要ります
- 行動食|10時間を超える行程では、休憩のたびに補給する量が必要です
- 雨具|稜線は逃げ場がなく、天候の変化を直接受けます
- 登山靴|登り返しの連続で足首と膝への負担が大きくなります
- 地図とバスの時刻表|エスケープ路の判断と帰りの便の確認に使います
体力の見積もりが不安な場合は、まず塔ノ岳や丹沢山を日帰りで歩いてみてください。塔ノ岳往復で余力がどれくらい残るかが、蛭ヶ岳を組めるかどうかの判断材料になります。
出発前に確認しておきたいのが登山道の通行状況です。丹沢では台風や大雨のあとに崩落で通行止めになる区間が出ます。神奈川県が丹沢大山エリアの登山道通行情報を公開しているので、計画したルートが歩ける状態かをここで確かめてください。
エスケープ路が限られる蛭ヶ岳では、通行止めが1か所あるだけで行程全体を組み直すことになります。当日の朝ではなく、装備を揃える段階で見ておくほうが確実です。
よくある質問|蛭ヶ岳
蛭ヶ岳の読み方と標高を教えてください
読み方は「ひるがたけ」です。標高は1,673mで、丹沢山地の最高峰であり神奈川県の最高峰でもあります。
蛭ヶ岳は日帰りできますか?
北側の青根から入る最短ルートなら日帰りの記録があります。ただし距離15.6km・コースタイム7時間39分は林道ゲートを起点とした数字で、バス停から歩く場合は20.91km・9時間45分になります。
大倉から蛭ヶ岳を日帰りで往復できますか?
往復25.2km・コースタイム13時間のため、休憩を含めると1日で収めるのは困難です。山中泊を前提に組むことをおすすめします。
蛭ヶ岳へのアクセスはどうなりますか?
北側から入る場合はJR橋本駅または相模湖駅からバスで三ケ木へ、乗り換えて東野または焼山登山口で下車します。大倉から入る場合は小田急線の渋沢駅からバスで約15分です。
山頂に宿泊施設はありますか?
蛭ヶ岳山荘が山頂にあり、通年営業で宿泊と休憩ができます。日帰りが難しい行程のため、泊まりを組み込む選択肢は現実的です。
まとめ:蛭ヶ岳の登山口を選ぶ3ステップ
- 車かバスかを先に決める。最短15.6km・7時間39分は林道ゲート起点の数字で、バスなら往復で約5km・1時間半が加わる
- 日帰りか山中泊かを決める。大倉からの往復はコースタイム13時間で、休憩を含めると1日では収まらない
- 帰りのバスの最終時刻から逆算して出発時刻を決める。復路で乗り遅れると移動手段がなくなる
蛭ヶ岳の難しさは標高ではなく、どの登山口からも遠いという配置にあります。数字を比べるときは、その数字がどこを起点にしているかを先に確かめてください。
画像出典
- Photo by Nic Y-C on Unsplash
- Photo by sabari nathan on Unsplash
- Photo by Zion C on Unsplash


コメント