丹沢は首都圏から最も近い本格的な山域です。ところが「丹沢に登る」と言ったとき、指している山によって必要な時間は3時間から10時間まで変わります。同じ山域名で語られているために、この幅が見えにくくなっています。
この記事では丹沢の主な6座を、山頂の標高ではなく登山口から山頂までの標高差で並べ直します。どこから手を付けるかを決めるための一覧として使ってください。
この記事でわかること
- 丹沢の主な6座が標高723mから1,673mまで並ぶこと
- 登山口の標高が168mから583mまで違い、標高差の順が山の高さの順と一致しないこと
- 最初の1座に向く山と、経験を積んでから向かう山の分かれ目
- 丹沢主脈が大倉から蛭ヶ岳へどうつながっているか
- ヤマビルが出る時期と、県が公開している対策情報

丹沢にはどんな山がありますか?
丹沢は神奈川県の北西部に広がる山域で、東西に長く伸びています。よく登られる山を標高順に並べると次のようになります。
| 山 | 標高 | 主な起点 | 目安の所要時間 |
|---|---|---|---|
| 大野山 | 723m | 谷峨駅 | 通し約3時間 |
| 大山 | 1,252m | 大山ケーブル駅 | 登り約2時間15分・下り約2時間 |
| 鍋割山 | 1,273m | 大倉 | 往復約6時間30分〜7時間30分 |
| 塔ノ岳 | 1,491m | 大倉 | 往復の目安6〜7時間 |
| 丹沢山 | 1,567m | 大倉 | 登り5時間10分・下り3時間50分 |
| 蛭ヶ岳 | 1,673m | 釜立林道ゲート | 最短15.6kmで7時間39分 |
標高の幅は950mあります。丹沢という一語でまとめられていますが、大野山と蛭ヶ岳では計画の立て方がまったく違う山です。
最高峰は蛭ヶ岳の1,673mで、神奈川県の最高峰でもあります。一方で最も登られているのは大山で、ケーブルカーが通っているぶん入口が広くなっています。
名前が紛らわしいのが丹沢山です。山域全体を指す「丹沢」と、標高1,567mの個別の山である「丹沢山」は別のものを指します。丹沢山は最高峰ではありません。
標高差で見るとどの山が一番きついですか?
山の高さだけを見ると順番が分かりますが、実際に登る量は登山口の標高で決まります。編集部で各起点の標高を確認したところ、丹沢の登山口は168mから583mまで415mの開きがありました。
| 起点 | 起点の標高(実測) | 目指す山 | 山頂標高 | 単純標高差 |
|---|---|---|---|---|
| 谷峨駅 | 168m | 大野山 | 723m | 約555m |
| 大倉 | 294m | 鍋割山 | 1,273m | 約979m |
| 大倉 | 294m | 塔ノ岳 | 1,491m | 約1,197m |
| 大倉 | 294m | 丹沢山 | 1,567m | 約1,273m |
| 大山ケーブル駅 | 405m | 大山 | 1,252m | 約847m |
| 釜立林道ゲート | 583m | 蛭ヶ岳 | 1,673m | 約1,090m |
起点の標高は地形データから取った値で、解像度の都合により公称値とは多少ずれます。山頂標高は公式の値を使い、この表は差の目安として見てください。
ここで順番が入れ替わります。最高峰の蛭ヶ岳は単純標高差では約1,090mで、丹沢山の約1,273mより小さくなります。林道を詰めた583m地点から登り始めるからです。

それでも蛭ヶ岳が丹沢で最も厳しい山とされるのは、累積標高差が別物だからです。最短ルートの累積は登り1,558mで、単純標高差の約1,090mを468m上回ります。差の分だけ登り返しがあるという意味です。
つまり丹沢の難易度は、山頂の標高でも単純標高差でもなく、稜線上の登り返しを含めた累積標高差で決まります。コースタイムを自分の速度に置き換える方法は登山のコースタイムの読み方にまとめています。
最初の1座はどれを選べばいいですか?
丹沢を初めて歩くなら、大野山か大山から入るのが無理のない順序です。
大野山は標高723m、谷峨駅から山頂まで約1時間30分、山北駅へ下りて通し約3時間の行程です。駅を起点と終点にできるため、車の心配がありません。詳しくは大野山はきつい?丹沢の展望台までの傾斜と時間にまとめています。

大山は標高1,252mですが、ケーブルカーで標高差の約半分を稼げます。登り約2時間15分・下り約2時間で、行動時間は休憩を含めて5〜6時間が目安です。組み立て方は大山(丹沢)の難易度は?小田急線で行く日帰りで解説しています。
次の段階が大倉から入る山です。鍋割山は往復約16km・6時間30分〜7時間30分、塔ノ岳は大倉尾根で標高差1,244mを登ります。どちらもケーブルカーはありません。
- 大野山または大山で、行動時間5時間前後に慣れる
- 鍋割山か塔ノ岳で、標高差1,000m超と大倉尾根の登りを経験する
- 丹沢山、そのあとに蛭ヶ岳へ進む
私が計画を組むときに基準にするのは、塔ノ岳を往復して余力がどれくらい残るかです。ここで脚が残らないうちは、丹沢山から先は日程を分けたほうが安全です。
丹沢主脈の縦走はどうつながっていますか?
丹沢主脈と呼ばれる稜線は、南の大倉から北の焼山登山口まで貫いています。大倉尾根で塔ノ岳へ上がり、丹沢山を越えて蛭ヶ岳に至り、そこから北へ下る流れです。
| 区間 | 内容 |
|---|---|
| 大倉 → 塔ノ岳 | 大倉尾根。標高差1,244m・距離7.5km |
| 塔ノ岳 → 丹沢山 | 標高差は約76mだが登り返しがあり90分 |
| 丹沢山 → 蛭ヶ岳 | 主脈の最奥部。蛭ヶ岳山荘が山頂にある |
| 蛭ヶ岳 → 焼山登山口 | 姫次を経て北へ下る |
塔ノ岳から丹沢山までの区間が、この稜線の性格をよく表しています。標高差だけなら約76mですが、竜ヶ馬場などの登り返しがあるため90分かかります。数字上の標高差と体感が合わない理由がここにあります。
主脈を通しで歩く場合、焼山登山口起点で24.6km・12時間3分です。日帰りで通すのは現実的ではないため、山頂の蛭ヶ岳山荘に泊まる形が一般的になります。区間ごとの詳細は丹沢山は日帰りできる?塔ノ岳から先の90分と蛭ヶ岳の最短ルートはどこ?神奈川県最高峰への道をあわせて読んでください。
丹沢のヤマビルはいつ出ますか?
丹沢を歩くうえで、ほかの山域と大きく違うのがヤマビルの存在です。神奈川県の資料によれば、ヤマビルは体長2〜8cm程度の環形動物で、湿った落ち葉の下を好み、動物や人の気配を察知して近づいてきます。

県は、かつて丹沢の奥部にしかいなかった生息域が、近年は丹沢大山の山麓まで急速に広がったと説明しています。里山や農地、住宅地の周辺でも見られるようになったという内容です。
活動が活発になるのは湿度の高い時期です。県は夏の丹沢ではディートを高濃度で含む忌避スプレーを事前に使うことで、吸血される確率を大きく下げられるとしています。詳細は神奈川県「ヤマビルにご注意を!」で公開されています。
- 忌避スプレー|靴・靴下・ズボンの裾に、登る前に噴霧します
- 肌の露出を減らす|足首まわりから入られるため、裾の処理が要点です
- 休憩場所|落ち葉の上や湿った沢沿いに長く座らないでください
- 下山後の確認|靴下と裾を脱ぐ前に、付着していないか見てください
- 時期の選択|乾いた環境を嫌うため、湿度の低い時期のほうが遭遇は減ります
乾燥した季節や、日当たりと風通しのよい尾根では出にくくなります。丹沢を初めて歩くなら、湿度の高い時期を避けるだけでも負担が減ります。
丹沢へは電車で行けますか?
丹沢の主な登山口は、いずれも公共交通機関でたどり着けます。ここが首都圏の他の山域と比べたときの強みです。
| 登山口 | 最寄り駅 | アクセス |
|---|---|---|
| 大倉 | 小田急線 渋沢駅 | バスで約15分 |
| 大山ケーブル | 小田急線 伊勢原駅 | バスで約30分 |
| 大野山 | JR御殿場線 谷峨駅・山北駅 | 駅から徒歩 |
| 西丹沢ビジターセンター | 小田急線 新松田駅 | バスで約70分 |
| 東野・焼山登山口 | JR橋本駅・相模湖駅 | バス乗り継ぎ |
注意したいのがバスの本数です。丹沢の北側にあたる東野や焼山登山口へは乗り継ぎが必要で、便数も多くありません。帰りの最終時刻から逆算して出発時刻を決めてください。
関東の山を電車で回る全体像は関東の電車で行ける登山ガイドにまとめています。
丹沢の登山適期はいつですか?
丹沢は標高1,700m未満の山域で、通年で歩けます。ただし季節ごとに条件が変わるため、どの山を選ぶかと時期は切り離せません。
| 時期 | 条件 | 向く山 |
|---|---|---|
| 3〜5月 | 気温が上がり歩きやすい。ヤマビルはまだ少ない | 全域 |
| 6〜9月 | 湿度が高くヤマビルが活発。標高の低い樹林帯は暑い | 早朝発の大山・稜線の主脈 |
| 10〜11月 | 空気が澄み展望がよい。登山者が最も多い | 全域 |
| 12〜2月 | 稜線は凍結や積雪がある。日照時間が短い | 大野山などの低山 |
冬に気をつけたいのが日照時間です。12月は日の入りが早く、コースタイム9時間の丹沢山や7時間39分の蛭ヶ岳は明るいうちに終わりません。行動時間の長い山は日の長い時期に回してください。
逆に湿度の高い6〜9月は、ヤマビルと暑さの両方がかかります。標高の低い樹林帯を長く歩く鍋割山や塔ノ岳の大倉尾根は、この時期に選ぶと消耗が大きくなります。
紅葉の時期は登山者が集中します。大倉行きのバスも混むため、始発に近い便を狙うか、大野山のように駅から歩ける山に振り替える判断が要ります。
丹沢を歩く前に確認することは何ですか?
都心から近いという理由で、丹沢は軽装で入られやすい山域です。ところが標高差1,000mを超える山が並び、稜線ではエスケープできる道が限られます。
出発前に確認したいのが登山道の通行状況です。台風や大雨のあと、崩落で通行止めになる区間が出ます。神奈川県が丹沢大山エリアの登山道通行情報を公開しているので、計画したルートが歩ける状態かをここで確かめてください。
- 登山道の通行状況|県の情報で、崩落や通行止めの有無を見ます
- バスの時刻|帰りの最終便から逆算して出発時刻を決めます
- ヘッドライト|行動時間6時間を超える山では携行してください
- 水と行動食|主脈上に水場は多くありません
- 雨具|稜線は逃げ場がなく、天候の変化を直接受けます
丹沢は1座ごとの性格が大きく違います。前回歩いた山の感覚をそのまま次の山に当てはめないでください。
丹沢の記事マップ
- 大野山はきつい?丹沢の展望台までの傾斜と時間|723m・通し約3時間
- 大山(丹沢)の難易度は?小田急線で行く日帰り|1,252m・ケーブルカーあり
- 鍋割山の日帰り登山|大倉から二俣ルートの目安|1,273m・往復約16km
- 塔ノ岳の難易度は?大倉尾根と表尾根の違い|1,491m・標高差1,244m
- 丹沢山は日帰りできる?塔ノ岳から先の90分|1,567m・往復9時間
- 蛭ヶ岳の最短ルートはどこ?神奈川県最高峰への道|1,673m・県内最高峰
よくある質問|丹沢
丹沢の最高峰はどの山ですか?
蛭ヶ岳で、標高1,673mです。丹沢山地の最高峰であり、神奈川県の最高峰でもあります。
丹沢で最初に登るならどの山がいいですか?
大野山か大山をおすすめします。大野山は標高723mで通し約3時間、大山はケーブルカーで標高差の約半分を稼げます。
丹沢山と丹沢は違うのですか?
違います。丹沢は山域全体の呼び名で、丹沢山はその中にある標高1,567mの個別の山です。丹沢山は最高峰ではなく、最高峰は蛭ヶ岳です。
丹沢のヤマビル対策は何をすればいいですか?
神奈川県は、夏はディートを高濃度で含む忌避スプレーを事前に使うことで吸血される確率を大きく下げられるとしています。靴と裾に噴霧し、下山後に付着を確認してください。
丹沢は日帰りできますか?
山によります。大野山は約3時間、大山は5〜6時間で収まりますが、丹沢山は往復9時間、蛭ヶ岳は最短でも7時間39分かかります。
丹沢の主脈を通しで歩くと何時間かかりますか?
焼山登山口を起点とした場合、24.6km・コースタイム12時間3分です。日帰りは現実的でないため、蛭ヶ岳山荘での宿泊を組み込む形が一般的です。
まとめ:丹沢の山を選ぶ3ステップ
- 山頂の標高ではなく、登山口からの標高差で候補を並べる。丹沢の登山口は168mから583mまで415mの開きがある
- 登り返しを含む累積標高差を見る。蛭ヶ岳は単純標高差約1,090mに対し累積1,558mで、468mの差が登り返しにあたる
- 大野山か大山で行動時間5時間に慣れ、塔ノ岳で標高差1,000m超を経験してから丹沢山と蛭ヶ岳へ進む
丹沢は同じ山域名で語られるぶん、難易度の幅が見えにくい場所です。表の数字を起点に、いまの体力で届く1座から順に進めてください。
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