戸隠山は危険?蟻の塔渡りと難易度D

頂上へ続く細い岩の尾根 全国

戸隠山は長野市の北西、戸隠連峰にある標高1,904mの山です。戸隠神社の奥社の背後にそびえ、登山道の途中に蟻の塔渡りと剣の刃渡りと呼ばれる岩の尾根があります。長野県の山のグレーディングでは、体力度は3と低いのに、技術的難易度はDと高く評価されています。この記事では、その差が何を意味するのかと、戸隠山に登る前に確かめておくことを整理します。

戸隠山の基本情報

山名戸隠山
所在地長野県
標高1,904m

この記事でわかること

  • 戸隠山が標高1,904mで、戸隠神社奥社から登る山であること
  • 長野県のグレーディングで体力度3、技術的難易度Dであること
  • コースタイムが6時間、歩行距離が7km、累積の登りが760mであること
  • 蟻の塔渡りと剣の刃渡りが両側の切れ落ちた岩の尾根であること
  • 岩場を通る以上、ヘルメットを持っていく価値があること

戸隠山はどんな山ですか?

戸隠連峰の中心にある標高1,904mの山です。古くから山岳信仰の対象とされ、麓の戸隠神社の奥社から登山道が始まります。

頂上へ続く細い岩の尾根

周辺には飯縄山や妙高山など、長野県北部を代表する山が並びます。その中で戸隠山は、標高では目立たないのに、岩の尾根の険しさで名前が知られている山です。

難易度はどれくらいですか?

技術的難易度はDです。信州 山のグレーディングでは、戸隠山(奥社駐車場から)のルートを体力度3、技術的難易度Dと評価しています。

項目数値
体力度3(1〜10段階)
技術的難易度D(A〜Eの5段階)
コースタイム6時間
歩行距離7km
累積の登り760m
出発点奥社駐車場(標高1,215m)

体力度3という数字だけを見て、私は最初、この山を中級の日帰り程度に考えていました。技術的難易度Dの意味を読み直して、その見方を改めました。体力的には6時間で済む山ですが、通過する岩場の難しさは北アルプスの岩稜と同じ段階に置かれています。

技術的難易度は、ルートの中で最も難しい区間を基準に決められます。平均ではなく最も厳しい一か所で判定されるため、戸隠山のDは蟻の塔渡りと剣の刃渡りの存在をそのまま反映した数字です。同じDの評価を受けている山としては北穂高岳があります。

蟻の塔渡りとはどんな場所ですか?

両側が切れ落ちた細い岩の尾根です。八方睨(1,900m)の手前にあり、幅の狭い尾根を人が蟻のように這って進む様子から名前が付いたとされます。

切り立った岩壁の連なる山

蟻の塔渡りに続く剣の刃渡りも、同じように刃物の背のような岩の上を渡る区間です。足を置ける場所が限られ、左右どちらに体を傾けても支えがありません。三点支持と呼ばれる、両手両足のうち3点で体を支えながら動く基本が求められます。

この区間では、つまずいて転ぶ滑落よりも、足場を外して落ちる墜落の事故が毎年のように起きていると伝えられています。道が崩れているのではなく、地形そのものが危険だということです。

どのルートで登りますか?

戸隠神社奥社から登り始め、蟻の塔渡りと剣の刃渡りを越えて八方睨に出るのが代表的なルートです。そこから戸隠山の山頂を経て、九頭龍山、一不動と稜線をたどり、氷清水を経由して戸隠牧場へ下る周回がよく歩かれます。

  • 戸隠神社奥社
  • 蟻の塔渡り・剣の刃渡り
  • 八方睨(1,900m)
  • 戸隠山(1,904m)
  • 九頭龍山・一不動
  • 氷清水から戸隠牧場へ
斜面を横切る細い登山道

蟻の塔渡りは登りの途中にあります。下りで通過する組み方もできますが、疲れた状態で岩の尾根を下るほうが足の置き場を見誤りやすくなります。難所を体力のある時間帯に済ませるという意味で、奥社から登って蟻の塔渡りを先に越える順番が選ばれています。

周回すると出発点に戻れますか?

戻れません。奥社から登って戸隠牧場へ下る周回は、登り始めと下り終わりの場所が違います。車で奥社の駐車場に停めた場合、牧場から駐車場まで戻る手段を先に決めておく必要があります。

奥社へ引き返す往復にすれば車の回収は楽になりますが、その場合は蟻の塔渡りを下りでも通ることになります。岩の尾根を2回通るか、下山後の移動に手間をかけるかの選択です。多くの人が周回を選ぶのは、難所を一度で済ませられるためです。

どちらの組み方でも、コースタイムの6時間には休憩が含まれていません。岩場では前後の人との間隔を空けて待つ時間も出るため、公表値ではなくあくまで目安ですが、7時間から8時間を見込んでおくと下山の時刻に余裕が残ります。

途中で天気が崩れたらどうしますか?

蟻の塔渡りの手前で引き返します。岩が濡れた状態で尾根を渡るのは、乾いているときとは別の難しさになります。登りの途中で雨が降り出したら、難所に入る前の地点で判断してください。

一度蟻の塔渡りを越えてしまうと、戻るにも同じ岩場を通ることになります。引き返すかどうかの判断は、難所の手前でしかできないと考えておくのが安全です。

ヘルメットは必要ですか?

持っていく価値は大きいと考えます。岩の尾根で転倒したときに頭を守れるのはヘルメットだけで、上から落ちてくる石への備えにもなります。

法律や規則で着用が決められているわけではありません。それでも、墜落の事故が繰り返し起きている区間を通る以上、頭部を守る装備を省く理由は見当たりません。軽量の登山用ヘルメットであれば、ザックに付けて運んでも負担は小さく済みます。

ヘルメットに加えて、岩をつかむ手を守るグローブも用意してください。両手を使う場面が続くため、ストックはザックに収められる形のものが扱いやすくなります。

蟻の塔渡りを避ける道はありますか?

後半部分については、斜面側に巻き道が付けられているとされます。ただし、巻き道に至るまでの岩場は通過しなければならず、難所をすべて避けられるわけではありません。

険しい斜面に張りつく緑

岩の尾根に不安がある場合は、戸隠山そのものを行程から外す判断のほうが確実です。同じ戸隠周辺でも、岩場を通らずに歩ける山や道はあります。無理に越えようとせず、別の山を選ぶことも登山の判断のうちです。

どんな人に向いていますか?

鎖場や岩稜の通過に慣れている人です。体力よりも、高度感のある場所で落ち着いて手足を動かせるかどうかが問われます。

岩場の経験は段階を踏んで積むものです。鎖場のある山で難易度の違う道を比べた例として妙義山の記事も参考になります。易しい道から順に歩いて自分の適性を確かめ、そのうえで戸隠山に向かってください。いきなり蟻の塔渡りで岩稜を初めて経験するという計画は避けるべきです。

いつ登るのがいいですか?

雪が消えて岩が乾いている時期です。岩の尾根は濡れると滑りやすくなり、同じ場所でも危険度が上がります。

断崖と松の生えた岩の稜線

雨の翌日や霧で岩が湿っている日は、晴れていても足元の条件が悪くなります。岩の表面は日が当たるまで乾きにくいためです。戸隠山は天気予報が晴れというだけでは決められない山で、前日の雨の有無まで確かめてから出発するのが安全です。

長野県北部の山では、登山口までの道路が季節によって使えなくなる場所もあります。車でのアクセスが前提になる山の考え方は雨飾山の記事でも扱いました。

よくある質問|戸隠山

戸隠山の標高は?

1,904mです。戸隠連峰の中心にあり、戸隠神社奥社の背後にそびえます。

難易度はどれくらいですか?

長野県のグレーディングで体力度3、技術的難易度Dです。コースタイムは6時間、歩行距離は7kmです。

蟻の塔渡りとは何ですか?

両側が切れ落ちた細い岩の尾根です。八方睨の手前にあり、剣の刃渡りと続けて通過します。

ヘルメットは必要ですか?

着用の規則はありませんが、墜落の事故が起きている区間を通るため、持っていく価値は大きいと考えます。

初心者でも登れますか?

岩稜の経験がない人には向きません。鎖場や岩場に慣れてから挑戦する山です。

まとめ|戸隠山に登る前の3ステップ

戸隠山は、体力より技術で判断する山です。次の順で確かめてください。

  1. 技術的難易度Dの意味を受け止める。体力度3・6時間という数字で楽な山と判断しない
  2. 岩場の経験を先に積む。鎖場や岩稜で三点支持を使った経験がなければ、別の山で練習してから向かう
  3. ヘルメットとグローブを用意し、岩が乾いた日を選ぶ。前日の雨の有無まで確かめる

体力度・技術的難易度・コースタイムは、長野県が公表している信州 山のグレーディングの数値を用いました。ルートの状況は年によって変わることがあるため、登る前に戸隠の観光案内などで最新の情報を見てください。

画像出典

本文の写真はUnsplashで公開されているものです(撮影:Andrew、Soumyadip Jana、Jamie Pilgrim、Anastasia D、Marc Cordeauの各氏)。蟻の塔渡りや戸隠山の実際の風景とは異なります。

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